三行早見
- 効果:集中力と思考力UP、体調不良解消
- 副作用:食欲消滅、体調不良検知できない、性欲減退、(過剰量で眠気や無気力感)
- ストラテラで、ストラテラに頼らなくても大丈夫な生活を構築すべし
ADHDの治療薬として、日本ではストラテラとコンサータという、2種類の薬が処方されているようです。
研究生活の間、私はストラテラ40mg(及びそのジェネリック医薬品であるアトモキセチン40mg)を処方されていたので、その体験談を書いていきます。
ストラテラには、良い効果と悪い副作用の両方が存在します。
それらについて、私の主治医の意見と共にご紹介いたします。
効果:集中力と思考力UP、体調不良解消
ストラテラは間違いなく、私の脳にメリットをもたらしました。
そのメリットとは、集中力と思考力の増加、および体調不良の解消です。
集中力に関しては、思考があちこちに飛びがちな私の脳を、一つのタスクに集中し続けられるように、ストラテラが変化させました。
これにより、実験操作に集中して、より緻密な操作を行え、ミスが減りました。
思考力については、負の連鎖パターンからの脱却と、切り替え能力の増強が見られました。
以前は「実験やらなきゃ詰む、ヤバイ、でも何やればいいか分からない」という、いつまでも終わらない悶々とした思考でした。
そこから、「自分が卒業するために必要な事は何か」「そのために必要な実験は何か」「その実験を行うために、どんな技術や操作を身につける必要があるか」などといった、建設的な思考をできるようになりました。
また、思考の切り替えも上手くなりました。
ストラテラ導入以前は、実験操作のキリのいいところまでやるようにしていました。
(そして往々にして実験が長引き、体を壊していた)
導入以後は「今日は体を優先してここでやめよう」という判断ができるようになりました。
加えて、体調不良の解消も効果として挙げられました。
ストラテラを導入してから、自分の体調が、9段階評価で2段階ほど底上げされたような感覚がありました。
つまり、基本的な体調が上がるので、活動可能な日が増えるというわけです。
さて、ここまで書いたら、ストラテラは集中力・思考力・体調に効く、便利な薬に思われます。
実際に便利だったのですが、その便利さと引き換えに多数の副作用も孕んでいました。
副作用:食欲消滅、体調不良検知できない、性欲減退、(過剰量で眠気や無気力感)
ストラテラの副作用で、自分への影響が大きかったのは、食欲の消滅、体調不良を検知できなくなること、性欲の減退、そして過剰量摂取による眠気や無気力感でした。
まず、食欲の消滅。減退などというレベルではなく、あの「お腹が減った」という感覚が一切消滅しました。
これによって起きたことは2つあり、食事習慣の崩壊と、食事による精神の回復不能です。
考えてみてください、「お腹が減った」から、食べる必要も感じ、食べたら美味しいですよね?
しかし、その感覚が消滅してしまうと、食べる必要も感じないし、食べても美味しさが半減します。
必要がないから、食事は身体維持のための義務に成り下がり、面倒くさいから抜いてもいいやという思考に陥ります。
加えて、食事の美味しさが半減するので、食事を摂っても「ああー、美味しい!幸せ!」というあの感覚を得られない。
空腹は最高のスパイスという言葉がまさにそれで、ストラテラによって、最高のスパイスを全部抜かれた、味気ない食事をすることになりました。
美味しい食事を想像してみてください。
そして、その美味しさを半減させた不味い食べ物を、義務感で食べるところを想像してみてください。
食事習慣は崩壊しますし、不味い食べ物を食べても幸せになれませんよね?
また、ストラテラを飲んでから、体調不良を検知できなくなりました。
これは、前述の「体調不良を解消できる」と表裏一体です。
「体調が良く感じられる」代わりに、「倒れる一歩手前でも平気で働ける」体になってしまいます。
無理しすぎない適切な習慣を持っていない限り、「まだ大丈夫」というふうに動き続けた結果、体を致命的に壊すことにもつながりかねません。
加えて、性欲も減退しました。こちらは、消滅まではいかず、半減程度でしたが、快感が半減し、性生活に支障が出ました。
また、根元的な欲求である性欲が減少するので、生き物としてのエネルギーがなくなったような感覚もありました。
さらに、(こちらは一時期ストラテラの量を80mgにしていた時にのみ、現れた副作用ですが)堪え難い眠気や無気力感に襲われ、寝ている以外にほとんど何もできないということもありました。
主治医曰く、これらの副作用は全て、ストラテラによって起こりうるそうです。
特に、量が適切でない・体質に合わない場合は、眠気や無気力感で動けなくなるという深刻な副作用が出るようです。
ストラテラの効果と副作用を見てきましたが、続いては、私がこの薬をどのように利用していたか、なぜやめられたのかを述べていきます。
ストラテラで、ストラテラに頼らなくても大丈夫な生活を構築すべし
困難な時はストラテラで乗り切り、その後はストラテラなしでも生きていける生活を構築する、というのが、この薬のベストな利用法だと思います。
私は、研究生活で困難な時期はストラテラを使って、体調を無視し、思考力と集中力を伸ばして乗り切りました。
その後、研究室から離れたストレスの少ない環境下で、運動・食事・睡眠・メンタルのバランスを整えた生活環境を構築しました。
そして、主治医と相談してストラテラの服用をやめ、ストラテラなしで生きていけるように、現在も努力を続けています。
主治医曰く、「この薬は、飲まずに生活できるなら、飲まなくてもいいもの」とのことでした。
困難な時はストラテラを利用してブーストをかける。
そして、困難から抜け出したら、適切な生活環境を構築してストラテラをやめる。
このような戦略を、医師と相談しつつ取ると良いでしょう。
まとめ
ストラテラは、困難な時には、仕事を遂行する(あるいはその環境から逃げる)ための、思考力や集中力を与えてくれるので、大きな手助けになります。
他方、行きていく上で必要になる感覚を遮断し、生活習慣を崩壊させるというデメリットもあります。
困難な時はストラテラに頼り、困難を抜け出したら、理想的な生活環境を構築してからやめる、という戦略で使うと良いでしょう。
もっとも、このケースは、軽度のADHDだからこそ可能な戦略である可能性もあります。
決して自己判断で服薬をやめず、医師と相談の上で慎重に戦略を練ってください。